「広告はSNSをやらない罰金だ。」
こんな趣旨の言葉を、どこかで一度は見聞きしたことがあるかもしれません。
確かにInstagramやX、Threadsなどで集客できている事業者は存在しますし、無料で集客ができるにも関わらず、わざわざ広告費をかけて集客する必要がどこにあるのかと疑問に感じる人もいらっしゃるでしょう。
また「罰金」という表現はセンセーショナルであり、それが故に多くの人の目に触れる機会が増え、多くの人が引用し共感するのだとも思います。
でも、この言葉が広まれば広まるほど、マーケティングに関する誤解が広まり、事業の選択肢を狭めてしまう危険性があるのは確かです。そもそも広告費は決して罰金などではないのですから。
広告を出さないことは本当に正義なのか
「広告費は罰金」という考え方を素直に受け入れると、「広告費は本来払わなくてもいいもの」「SNSさえ育てていれば広告は必要ないもの」ということになります。
でも、現実はそうでしょうか。
世の中を見渡せば、多くの企業が、お店が、個人法人問わず多くの事業者が広告を使っています。
広告費を潤沢に出すことのできる大企業だけではなく、急成長しているD2Cブランドも、スタートアップも、お店やクリニックや教室を開業している個人も、インターネット上で完結するビジネスに取り組んでいるひとり起業家の皆さんも、広告を使っている人は多いです。
そしてWEB広告を出稿している事業者の中には、当然ながらSNSで何万人ものフォロワーを集めている人もたくさんいます。
もし広告が「SNSを頑張らなかった罰金」なのであれば、彼らは真っ先に広告を止めているはずです。
でも実際にはそうなっていません。
広告は、成功していない人が仕方なく使うものではなく、その事業がうまくいく・いかないに関係なく、当たり前に使われるべきものだからです。
広告を使わないことにも大きなコストがある
広告費は目に見えるコストです。毎月請求されるので「高い」という感情が呼び起こされやすいのも事実でしょう。
一方で、広告を使わない際に支払うことになるコストは目に見えないもの、あるいは複雑なものです。
だから軽視されがちなのです。
例えば、SNSだけで集客しようとすると、そのための時間や人件費がかかります。結果として、同じ数の顧客を獲得するにあたって必要なコストは広告費よりも高くなってしまうケースも多々見受けられます。
それだけではありません。
SNSだけで集客しようとすると、否が応でもアルゴリズムと向き合い、時に振り回されることになります。
先月まで伸びていたアカウントが、今月は伸びない。
フォロワー数は順調に伸びているのに、リーチは落ちていく。
数字が落ちるたびに焦る。
投稿頻度を減らさないようにする一方で、心は擦り減っていく。
バズを起こすために強い言葉や刺激的な切り口に頼るようになる。
本当はサービスや商品をお客様に届けて満足してもらうことが目的なはずなのに、いつの間にか「SNSで伸びる投稿をつくること」が仕事になってしまう。
そんな人たちを、私たちはこれまで何人も見てきました。
さらにライフスタイルそのものをコンテンツ化し、自分の休日も、家族との時間も、食事も、旅行も、投稿のネタとして考えるようになってしまいます。
カフェに行っても、料理が運ばれてきたらまず写真。旅行に行っても、楽しむよりも撮影が優先。
それも大事な仕事だから…と割りきる人もいるかもしれませんが、「広告は悪だ」「広告は罰金だ」「広告は怖い」と切り捨てる前に、少し立ち止まって考えてもいいのではないかもしれません。
もしかして私たちは、広告費を払わない代わりに、もっと高いものを支払っているのかもしれないと。
それは、時間であり精神的な豊かさであり、本来なら商品やサービスを磨くために使えたはずの時間かもしれません。
広告の本質は、リーチを獲得すること
広告とSNSを比較する人は多いですが、広告の役割を正しく理解できている人はあまり多くないかもしれません。
広告の役割はとてもシンプル。それは「リーチを獲得すること」です。
もう少し簡単な言葉を使うと「知ってもらう機会を増やすこと」です。
その先で購入してもらえるか、LINEに登録してもらえるか、SNSをフォローしてもらえるか、それは商品やブランド、導線の仕事といってもいいかもしれません。
「広告じゃなくてSNSを頑張ろう」と考える人も多いかもしれませんが、特にMeta広告であればフォロワーを伸ばすための広告はありますし、その場合、広告と対比されるのはSNSそのものではなく「SNSを伸ばす別のノウハウ(例えばリールなど)」になりますよね。
つまりSNSか広告かという二項対立で考えるのではなく、「Paid(課金集客)」か「Organic(無料集客)」かという対比で考えるほうが妥当であり、先ほどもお伝えしたように、たとえ無料で集客しているつもりになっていても、実際には多くの「目に見えないコスト」を支払っていることが多いものです。
SNSと広告は、どちらかを選ぶものではない
勘違いしていただきたくはないのですが、私は決して「SNSを頑張るのをやめて、広告集客に力を入れよう」と言いたいわけではありません。
事業や商材のカテゴリにもよりますが、基本的にはSNSアカウントは育てておいたほうがいいですし、独自の資産になりうるコンテンツも積み重ねるべきです。
Instagramも、ブログも、noteも、YouTubeも、あるいはTikTokも、価値があります。(その価値の優劣については、市場・顧客層・商材によってケースバイケースですが)
でも、広告は決してそれらと対立するものではありません。
Instagramを育てながらMeta広告を出稿してアカウントへの広告流入を増やしていけばいいですし、ブログやYouTubeで良いコンテンツができたならGoogle広告を出稿して多くの人にコンテンツを見てもらったほうがいいですよね。
あるいは無料集客は時間がかかるので、商材と販売導線ができたのであれば、同時並行で広告を出稿してリードを獲得していったほうが、もっと早く見込み顧客を獲得することができますし、売上に繋げることもできます。
広告とSNSを対比させたがる人はとても多いですが、PaidもOrganicも、どちらか一方を優先して、どちらか一方を切り捨てる必要など全くありません。
リソースの少ない個人だからこそ
時々「広告はまだ早い」「自分みたいな個人でビジネスをやっている人が広告なんて出すの?」と言う人がいます。
ただ、事業を始めたばかりだからこそ、リソースの少ない個人だからこそ、私は広告が有力な解決手段になると考えています。
広告の仕組みを単純化すると「リーチをお金で買う」ことになるので、事業を始めて1ヶ月目だろうが1週間目だろうが、あるいは1日目であろうが、広告費をかければ見込み客に対して情報を届けることができます。
SNSやオウンドメディアをコツコツ積み上げていった場合、半年とか1年経たないと出会えなかった顧客と、1日で出会うことができる可能性があるのです。
慣れないうちは広告を出稿して運用するのにリソースが取られ、結果を改善していくためにも時間や労力がかかるかもしれませんが、徐々にそんなに自分でやることは少なくなっていきます。
MetaやGoogleのAIが自動であなたの代わりに集客を頑張ってくれるのです。
それにMeta広告なら1日数100円という規模感で広告を出せます。何百万円以上かけて雑誌広告やテレビCMを出すわけでもないので、「自分のステージだとまだ早い」とか「大企業でもない自分が広告なんて」と二の足を踏む必要など一切ありません。
集客に使う時間や労力が限られる私たちだからこそ、賢く広告を使うべきなのではないかなと心から思います。
広告に対するネガティブな感情が事業を停滞させる
「広告費はSNSをやらない罰金」
この言葉はとても印象的で、強烈なパンチラインでもあり、多くの人の記憶に残るのでしょう。
でも、冷静に考えてみてください。この世の中で「広告を使わないほうがいい人」「SNSだけで事業を伸ばせる人」って実はそんなに多くありません。
一時期はSNSだけで上手く回っていたけど、時代が変わり、アルゴリズムが変わり、いつしか全く集客できなくなった「元有名人」のような人もたくさんいますし、アルゴリズムの奴隷のようになり疲弊したり、強い言葉を使うことに麻痺してしまって、人が変わってしまったような人も多いですよね。
あなたもユーザーとしてSNSを利用していて、3年も4年も同じ人の情報を熱心に追いかけるケースは少ないのではないでしょうか。一時期よくタイムラインに上がってきた人が、いつの間にかあんまり見なくなった。そんな経験は「あるある」ではないですか。
本来なら広告を活用したほうが早く検証できたことも、何ヶ月もSNSだけでためし続けて、時間とエネルギーを溶かしてしまう。
単にリーチが足りていないだけなのに「商品が悪いのでは」「発信が苦手だからビジネスがうまくいかないかも」と見当違いの悩みに苛まれてしまう、そんな遠回りをしてしまう人も少なくありません。
広告費は、SNSをサボった人が払う罰金ではありません。
リーチを獲得し、事業を適切に前進させるための効果的な選択肢です。
そもそも比較すべきではないものを比較してしまって、最善の手が打てなくなってしまうなんてとてももったいないので、冷静な視点で捉えて、今の自分のフェーズでは何に力を入れるべきなのかを考えてあげましょう!
